株式会社クオーレ

マニュアルの作成・活用・改訂

いろいろな業種業界のマニュアルづくりをお手伝いしていると、
共通してよく言われることがある。
「うちの仕事は、特殊ですから……」
「うちの人間は、職人気質が多いですから……」
だからマニュアルにはならない、という牽制球を最初に投げてくるのだ。
ホントに皆さん、自分の、自分たちの仕事は“特殊”だと思いたがる。
自分がやっていることは特別なノウハウを必要する仕事であると主張する。
自分の“特殊”な仕事が、マニュアルなんぞになるわけがない。
そう思うことによって、ささやかな自己満足と
ある種の優越感を持とうとしているようにも思える。
もっと言えば、既得権益を守る、自分の存在価値をアピールする、
といったこともあるかもしれない。
自分の仕事にプライドやこだわりを持つのは、とても大切である。
しかし、それと「マニュアル化」は、別物である。

こんな時、マニュアル屋さんは、あっさりとこう言う。
「大丈夫ですよ。ちゃんとしたマニュアルになりますから」と。
これも共通しているが、ほとんどの人はちょっと嫌そうな顔をする。
あからさまに反発してくる人もいる。
「できるのだったら、やってみればいい!」的な挑発姿勢を見せる人さえいる。

この独り言で何度か書いたが、私たちの仕事の8割は“基本”で占められている。
この“基本”は、マニュアルにできるのだ。
それなのに、自分の仕事は100%“特殊”だと思っている。
これは、錯覚以外の何物でもない。
だから、いつも内心苦笑しながら、ご高説を拝聴している。

世の中には、特殊な仕事、職人の技を必要とする仕事があるのは事実である。
しかし、それらがイコール「マニュアル」にならないということではない。
「マニュアル」にならないのではなく、
「マニュアル」にしてこなかっただけだ、とマニュアル屋さんは思っている。

例えば、日本酒づくりには、杜氏という、まさに職人の技が必要とされてきた。
匠の技をいかんなく発揮して、伝統の味を守る。
職人の腕がお酒の優劣を決める、と誰もがそう思っているだろう。
ここに、“獺祭”という日本酒がある。
人気のあるお酒なので、日本酒ファンならずともご存知の方は多いと思う。
山口県の旭酒造が作ったお酒で、
日本酒ランキング1位になったこともある銘酒でもある。
しかし、この会社には、いわゆる“杜氏”がいない。
では誰が、ということになるが、実は、この銘酒、
マニュアルで作ったお酒なのである。
“杜氏”という、失礼な言い方をすれば、「ブラックボックス化」した技を
徹底的に見える化し、マニュアル化して作ったお酒、
それが獺祭というお酒なのだ。

どうだろうか。
もっとも匠の技を必要とする日本酒づくりさえも、マニュアルにできる。
これに比べれば、他の仕事の“特殊”は、推して知るべし。
残念ながら、マニュアル屋さんには、言い逃れとしか聞こえないのだ。

マニュアルは、想像以上に深い。マニュアル、恐るべし、である。(次回に続く)

2015.05.14<No.166>