「がんばれー!」
マニュアル屋さんは、この言葉が好きである。割とよく使う。
でも、スポーツ選手の多くは、この言葉が嫌いだとのこと。
「観客からこの言葉をかけられると、嫌になる。
こんなにがんばっているのに、もっとがんばれと言われるのかと、正直へたります」
確かに、がんばっている人には酷な言葉かもしれない。
「これ以上、どうすりゃいいんだよー!」
となるのも、わかるような気がする。
しかし、マニュアル屋さんは、この言葉を自分に対して使っている。
仕事で壁にぶつかったとき、悩んでいる・落ち込んでいるときなどに、
自分を鼓舞するために使っている。
いたるところ、風呂やトイレなどでもよく使う。
「がんばれー!がんばれー!」
呪文のように唱える。これは、一種の自己暗示だと思う。
決まった言葉を繰り返し使うことで、自分をその気にさせる。
こうした言葉を、マニュアル屋さんは幾つか持っている。
「お前はできる! お前はできる!」
「終わらない仕事はない! 明けない夜はない!」
本の執筆で苦しんでいたときには、
「ローマは一日にして成らず!」
「塵も積もれば山となる!」
この言葉を呪文のように繰り返しながら、歩き回っていた。
小心者のマニュアル屋さんとしては、こんな言葉にすがりながら、
何とか気持ちを落ち着かせて前に進む勇気をもらってきた。
おかげさまで、これまで幾多の難関・難局を
この言葉によってくぐり抜けてきて、今がある。
自己暗示をかける
この方法を取り入れたのは、いつ頃からだろうか。
気がついたら、自然に口にしていたと思う。
ともあれ、これからもこの方法で様々な壁を乗り越えていきたい。
社員から突っ込みが入った。
「自己暗示もいいんですが、1人の時にやってくれませんか」
「ん? どうして……」
「うるさくて、迷惑なんですよ!」
「……スミマセン……」
無意識のうちに、呪文を唱えているらしい。
まさに、「独り言」である。
これからは、小さな声で言おう。
「マニュアル屋さん、がんばれー!」
2019.10.24<No.273>