株式会社クオーレ

マニュアルの作成・活用・改訂

「マニュアル作成 DAY」の設定

Posted on 11月 - 26 - 2015

マニュアルを作成する、原稿を書くという作業は、
膨大なエネルギーと時間、そして、集中力を必要とする。
経験した人ならわかると思うが、一言で言えば、非常にしんどい作業なのだ。
「マニュアル作成プロジェクト」に選ばれたメンバーは、
言うまでもなく、このマニュアルを「書く」ということがその役割になる。
1枚や2枚ではない。何十枚という量の原稿を、
決定稿まで何度も書かなければならないのだ。

しかし、作成メンバーに選ばれたからといって、
待遇や状況が変わるわけではない。
目標の数字が減らされたり、通常業務の量が減らされるわけではないし、
もちろん「作成手当」なども付かない。
しかもメンバーに選ばれた人は、
いわゆるハイパフォーマーやその道のベテランばかり。
ただでさえ、忙しい。
所属先でも重要な役割を持っていたり、売上などに占める割合も多い。
そんな彼らが、慣れないマニュアルづくりをする。当然、時間はかかる。
では、彼らは、いつ原稿を書くのか。
通常の業務が終了したあとに残業して、あるいは休日出勤や自宅で書いたりもする。
そこまでしなければ、自分の担当する原稿を決められた提出日までに
書き上げることはできない、というのが偽らざる現実である。
業務時間外に作成する、これが一般的な考え方である。

「もう、やってられませんよ!」
メンバーからよく出る、愚痴、不満である。
所属先の上司からは、「マニュアルもいいけど、売上も頼むよ」などと言われる。
会社の業務としてやっているのに、何も保証されない。
「降ろさせてもらえませんか?」
真顔でマニュアル屋さんに訴えてくる人もいるくらいである。

こんな厳しい状況を見かねて、ある会社の事務局を担当していた人が
社長に直訴した。
「マニュアルを作成する時間を、業務時間中に保証してもらえませんか」と。
作成メンバー個々の時間的・体力的負担が大きく、
モチベーション低下の要因になっている現状を説明し、
作成時間を強制的に確保することで、これらの問題を解消し、
かつ工期の短縮が図れるという考えである。
果たして、結果はどうなったか。何と、認められたのである。
「毎週水曜日13時~ マニュアル作成 DAY」
として設定されることになった。これはスゴイことである。
長いことマニュアル作成指導に関わってきたが、こんなことは初めてのことだ。

「プロジェクトの勉強会」が業務時間中に実施されるのは普通だが、
「原稿作成」という業務を「業務時間中に保証する」という考え方は正直なかった。
なぜか。マニュアル原稿作成を、無意識のうちに、
会議や他のプロジェクトの資料等の作成と同じ位置づけで捉えていたからだ。
その準備のための時間をわざわざ作る、保証するという発想は、なかった。
しかし、「作成」にかかる物理的時間は半端なものではない。
自分が担当するものだけではなく、
他のメンバーが書いたものをチェックするという時間も必要だ。
会社の基準づくりだから、一人が書いたものをそのままOKにすることはできない。
基準として大丈夫なのかを、メンバー全員でしっかり検証しなければならない。
いわゆる「準備」といった枠を大きく超えている。
それなのに、である。
いつの間にか「業務時間外に書く」ということが、当たり前になっていた。

この施策が了解を得られたのは、
「何としてでもマニュアルを整備し、定着させたい」という
トップの熱い思いである。
考えてみれば、「マニュアルは、会社の基準」だとさんざん言っていた割には、
その作成にかかる時間に対する認識が甘かった。
会社の「最新・最高のノウハウを集大成したもの=マニュアル」の作成である。
これほど重要なことはない。それなのに、である。
マニュアル屋さん、不明を恥じた。目からウロコ、である。

この画期的な取り組みは、言うまでもなく、大きな成果を上げている。

「マニュアル」は、本当に深い。まだまだ教えられることが多い。
これからも「マニュアル」とガチンコ勝負をして、さらに精進していきたい、
そう心から思っている。

2015.11.26<No.179>